2026年7月9日の米国株式市場は続伸し、NASDAQ総合指数は前日比1.30%高の26,206.89、S&P500は0.81%高の7,543.64、ダウ工業株30種平均は0.27%高の52,487.41で取引を終えた。米軍がイランへの新たな空爆を実施し、イラン側もペルシャ湾岸諸国への攻撃で応酬するなど地政学的緊張が再燃したものの、株式市場はこれを消化して上昇した。上昇の主因は半導体株の急伸で、VanEck半導体ETF(SMH)は2.5%上昇し、マイクロン・テクノロジーが4.5%高、サンディスクが7.6%高となるなど押し上げ役となった。原油価格の下落も投資家心理を支え、恐怖指数VIXは前日比6.27%低下の15.84と落ち着きを取り戻した。
半導体・AI関連株が牽引、NASDAQ1.3%高
米イラン情勢の緊迫化にもかかわらず、半導体・AI関連株の急伸と原油安を背景にNASDAQは1.30%高。VIXは15.84へ急低下し過熱感は後退。個別ではBridgeBioやAllegroが急騰する一方、アイオニスとアストラゼネカは心不全治療薬の治験失敗で急落した。
市場概況
セクター動向
半導体・ハイテクセクターが相場を牽引し、AIデータセンター向け需要を追い風にアレグロ・マイクロシステムズやルーメンタム・ホールディングスなどAI関連の電力半導体・光通信部品株が大幅高となった。ネットワーキング関連ではヒューレット・パッカード・エンタープライズが好決算とジュニパー統合への評価を背景に急伸し、通信インフラ関連の物色も強まった。一方でエネルギーセクターは軟調で、ホルムズ海峡でのタンカー航行が地政学リスクにもかかわらず継続していることが確認されたことでWTI原油先物は2.2%安の1バレル71.88ドル前後まで下落し、APAコーポレーションなど石油・ガス関連株の重荷となった。ヘルスケア・バイオ関連では、アイオニス・ファーマシューティカルズとアストラゼネカが共同開発する心疾患治療薬の第3相治験失敗が伝わり、両社株が急落してセクター全体の重しとなった。
注目銘柄
- BridgeBio Pharma, Inc. (BBIO): +15.12% — 小児軟骨無形成症を対象とした経口薬インフィグラチニブの第3相PROPEL3試験が主要評価項目・主要副次評価項目を達成し安全性プロファイルも良好だったと発表。加えてSixth Street、HealthCare Royalty、KKRから1株138ドルでのシリーズA優先株を通じ最大10億ドルの大型資金調達を実施したことも好感され、株価は上場来高値を更新した。
- Allegro MicroSystems, Inc. (ALGM): +11.49% — Mizuho証券が目標株価を54ドルから67ドルへ、TDコーウェンが55ドルから70ドルへそれぞれ引き上げ。両社ともAIデータセンターおよび自動車向け電力半導体需要の強さと顧客在庫調整の一巡を評価しており、アナリスト目標株価の相次ぐ引き上げが買いを誘った。
- Lumentum Holdings Inc. (LITE): +11.13% — メタ・プラットフォームズが2027年に向け計算能力を14ギガワットへ倍増する計画を示す内部メモが報じられ、9月には自社開発AIチップの量産も控えていることが判明。AIデータセンター向け光トランシーバー・光スイッチ需要拡大への期待から、AI投資拡大の恩恵株として買いが集中した。
- Ionis Pharmaceuticals, Inc. (IONS): -23.90% — アストラゼネカと共同開発するトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬エプロンタルセンの第3相CARDIO-TTRansform試験で、心血管死・再発心血管イベントの複合リスクにおいてプラセボ対比で統計的有意差を示せず主要評価項目を未達。同社の2026年成長戦略の柱と目されていた治験が失敗し、ジェフリーズやBofA、TDコーウェン、オッペンハイマーが軒並み目標株価を引き下げた。
- AstraZeneca PLC (AZN): -5.70% — 上記アイオニスとの共同開発薬ワイヌア(エプロンタルセン)のATTR-CM治療における第3相治験が主要評価項目未達となったことを受け急落。ロンドン市場では時価総額約190億ポンドが吹き飛んだと報じられ、シティやモルガン・スタンレーが見込んでいたピーク時年間売上33億~60億ドル超の予想が下方修正を迫られるとの見方が広がった。
為替・金利動向
米イラン情勢の緊迫化とインフレ再燃懸念を背景に長期金利には上昇圧力がかかり、米10年国債利回りは4.56~4.60%台と5月中旬以来の高水準で推移した。ドル円は161円台後半から162円近辺で取引され、日米金利差を意識した円安ドル高基調が継続している。原油高観測の後退で当日は原油相場が下落したものの、地政学リスクを巡る不透明感が根強く、金利・為替市場ともに神経質な値動きとなった。
今後の注目点
来週は米インフレ指標と金融大手決算が相次ぐ。7月14日には6月の消費者物価指数(CPI)が発表されるほか、同日にJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴが2026年第2四半期決算を発表し、本格化するQ2決算シーズンの試金石として注目される。7月15日には6月の生産者物価指数(PPI)も公表予定。市場コンセンサスではS&P500構成企業の第2四半期増益率は前年比23.9%程度と予想されており、7月28~29日のFOMCを前に、インフレ動向と決算内容が金融政策見通しを左右する展開が見込まれる。また中東情勢の緊迫化が続く中、原油価格やホルムズ海峡での航行動向も引き続き市場の焦点となる。
