2026年5月7日の米国株式市場は主要3指数がいずれも小幅下落した。ダウ平均は取引中に一時5万ドルの大台を突破する場面があったが、終値は前日比0.63%安の49,596.97ドルで引けた。S&P500は0.38%安の7,337.11、ナスダック総合は0.13%安の25,806.20で取引を終えた。個別の決算シーズンは堅調で、S&P500構成企業の約85%がこれまでの発表で市場予想を上回った。テクノロジー・サイバーセキュリティ銘柄を中心に好業績が相次いだ一方、エネルギーや一部消費財・ヘルスケア銘柄が相場の重荷となった。米・イランが外交交渉に向かいつつあるとの報道を受けてブレント原油が約3.6%急落し、シェブロンやキャタピラーなどエネルギー・素材株が売られた。FOMCはこの日、政策金利を3.50〜3.75%に据え置くことを決定したが、4名の理事が反対票を投じる異例の会議となり、声明文では「インフレは高止まり」と文言が変更された。
決算ラッシュで個別明暗、主要指数は小幅安
5月7日の米国株式市場は主要3指数が小幅安で引けた。ダウ平均は一時5万ドルを突破したが終値では届かなかった。AIインフラ関連銘柄が好決算で急騰する一方、ゾエティスやインスメッドなど一部ヘルスケア銘柄が業績不振で急落。FOMCは政策金利を据え置き、米・イラン交渉進展で原油が急落しエネルギー株に重荷となった。
市場概況
セクター動向
テクノロジー・AIインフラセクターが際立った強さを見せた。データドッグ(DDOG)、SiTime(SITM)、フォーティネット(FTNT)が相次いで四半期決算で大幅な予想超過を記録し急騰。AIデータセンター需要の拡大を背景にクラウド監視・可観測性、MEMS精密タイミング半導体、サイバーセキュリティの各分野で力強い成長が確認された。冷却システムメーカーのAAON(AAON)もデータセンター向け需要急増を受けて30%超の急騰となり、AIインフラ投資の恩恵を受ける銘柄群への資金流入が目立った。一方、ヘルスケア・製薬セクターは苦戦した。動物用医薬品大手ゾエティス(ZTS)は業績予想を下回り急落、バイオ製薬のインスメッド(INSM)もガイダンスの据え置きが嫌気されて急落した。エネルギーセクターは原油価格の急落で売り優勢。消費関連ではコカ・コーラ・コンソリデーテッド(COKE)がコスト上昇・利益率悪化で急落し、ファッションのタペストリー(TPR)は業績自体は予想を上回ったものの株価は下落した。
注目銘柄
- AAON, Inc. (AAON): +31.49% — 2026年第1四半期決算でAIデータセンター向け冷却システム需要の急拡大を背景に売上高4億9,700万ドルを計上し、市場予想(3億8,100万ドル)を大幅に上回る過去最高の四半期業績を達成。受注残は前年比2倍超の21億ドルに拡大。2026年通期ガイダンスを売上高成長率40〜45%に引き上げ、AI基盤整備の恩恵を享受するデータセンター冷却分野のリーダーとして再評価された。
- Datadog, Inc. (DDOG): +31.33% — 2026年第1四半期売上高10億7,000万ドルが市場予想9億5,990万ドルを上回り、調整後EPSも0.60ドルで予想0.51ドルを超過。2026年通期売上高見通しを43億〜43億4,000万ドルに大幅引き上げ(従来40億6,000万〜41億ドル)。AI監視・可観測性プラットフォームへの企業需要の持続的拡大が評価され、グッゲンハイムが目標株価を175ドルから225ドルに引き上げた。
- Fortinet, Inc. (FTNT): +20.03% — 2026年第1四半期の非GAAPベースEPS 0.82ドルが市場予想0.62ドルを大幅に上回り、売上高18億5,000万ドルも予想超過。製品売上高は前年比41%増で、AIデータセンターや産業制御環境(OT)向けセキュリティ需要が牽引。2026年通期ガイダンスを売上高77億1,000万〜78億7,000万ドルに引き上げ、AI時代のセキュリティ需要拡大への期待が株価を押し上げた。
- Insmed Incorporated (INSM): -23.41% — 2026年第1四半期の売上・利益は市場予想を上回ったが、2026年通期ガイダンスを据え置いたことが嫌気された。BRINSUPRI売上高10億ドル以上・ARIKAYCE売上高4億5,000万〜4億7,000万ドルという据え置き予想がガイダンス引き上げを期待していた投資家の失望売りを招いた。また4月に主力候補化合物ブレンソカチブの第2相試験(hidradenitis suppurativa適応)が主要評価項目を達成できなかったことへの懸念も引き続き株価の重荷となった。
- Zoetis Inc. (ZTS): -21.50% — 2026年第1四半期売上高22億6,000万ドルが前年同期比1.9%増にとどまり市場予想を下回った。調整後EPSも1.53ドルと予想比5.3%下回る。ペットオーナーの価格感度上昇による動物病院来院数の減少と皮膚科・寄生虫駆除分野での競合激化が響いた。2026年通期収益見通しを市場コンセンサスを0.8%下回る水準に引き下げたことも売りを加速させた。
為替・金利動向
ドル円は1ドル156.29円前後で推移。先週は160.66円まで円安が進んでいたが、東京市場での日銀による円買い介入観測が浮上し円高方向に修正された。米10年国債利回りは4.35%前後で安定推移。米・イランの外交交渉が進展しているとの報道を受けてブレント原油が約3.6%下落し97.61ドルまで低下、インフレ懸念の後退から長期金利の上昇圧力が和らいだ。FOMCは政策金利を3.50〜3.75%に据え置き、声明では「インフレは高止まり(elevated)」と従来より引き締まった表現に変更されたが、金利市場への影響は限定的だった。日本の10年国債利回りは2.49%前後まで低下し、29年ぶり高水準からやや落ち着いた。ドルインデックスは小幅な動きにとどまり、ユーロドルも大きな変動なく推移した。
今後の注目点
①パウエルFRB議長の任期は5月15日に終了予定で、後任人事と新執行部の金融政策スタンスが市場の注目を集める。②米・イラン外交交渉の進展次第では原油価格がさらに下落し、インフレ鎮静化への期待が高まる一方でエネルギー株の重荷となる可能性がある。③FOMCが「インフレは高止まり」と文言を変更したことで、次回(6月)会合に向けたCPIやPCEデータが利下げ見通しを左右する重要指標となる。④決算シーズンは佳境を過ぎたが、残余企業の発表結果および今後の業績ガイダンスが引き続き個別銘柄の変動要因となる見通し。⑤中東情勢(イランとの停戦交渉の行方、地域同盟国との緊張)が原油価格と市場センチメントへの変動要因として継続的に注視される。
