5月8日の米国株式市場は、NASDAQが1.71%高の26,247.08と最高値を更新し、S&P500も0.84%高の7,398.93で終値ベースの最高値を記録した。ダウ平均は12ドル高の49,609.16とほぼ横ばいだった。最大の上昇要因は同日発表の4月雇用統計で、非農業部門雇用者数が11.5万人増と市場予想(6.5万人)を大幅に上回り、失業率は4.3%で安定した。AIインフラ・ソフトウェア関連企業が引き続き相場をけん引し、NASDAQの週間上昇率は4.5%、S&P500も2.3%上昇と、両指数とも6週連続の上昇を記録した。米イラン間の軍事的緊張という地政学リスクが重しとなったものの、堅調な経済指標と強い決算がそれを上回った。VIXは17.19と落ち着いた水準にとどまり、市場全体のリスクセンチメントは良好だった。
NASDAQが最高値更新、雇用統計好調でテック高
5月8日の米国市場はNASDAQが1.71%高と最高値を更新、S&P500も0.84%高で最高値を記録。4月雇用統計が11.5万人増と予想6.5万人を大幅に上回り相場を押し上げた。ロケット・ラボやアカマイなど決算好調のAI関連銘柄が急騰。一方、クラウドフレアとハブスポットはガイダンス失望・大規模リストラ発表で急落した。
市場概況
セクター動向
テクノロジーセクターが市場全体をリードし、AI関連インフラ・半導体が特に強い動きを見せた。メモリ半導体ではマイクロン(+15.43%)とサンディスク(+16.48%)が急伸し、AI向け高帯域幅メモリ(HBM)需要の拡大に加え、4月のDRAM現物価格が前期比57%上昇、NAND価格も65〜70%上昇したことが追い風となった。宇宙・防衛テックではロケット・ラボが決算と大型契約の発表を受け34%超の急騰となった。CDN・セキュリティクラウドでは明暗が分かれ、18億ドルのAIクラウド長期契約を発表したアカマイが急騰した一方、大規模人員削減を発表したクラウドフレアが急落した。SaaSではハブスポットがガイダンス失望と相次ぐアナリスト格下げで約19%安となった。ラテンアメリカのeコマース・フィンテックでは、メルカドリブレ(−12.70%)が売上は予想超過ながらEPS未達と営業利益の20%減少が嫌気された。全体としてAIインフラ整備の恩恵を受けるハードウェア・インフラ企業と、利益率圧迫を抱えるソフトウェア企業の格差が鮮明となった。
注目銘柄
- Rocket Lab Corporation (RKLB): +34.32% — 第1四半期決算で売上高が前年比63.5%増の2億330万ドルと最高値を更新し、GAAPベースの粗利益率も38.2%の過去最高を記録。アンデュリルとの3,000万ドル多弾道超音速テスト飛行契約を含む防衛案件を相次いで獲得し、総受注残高が22億ドル超に拡大した。第2四半期売上高ガイダンスは2億2,500万〜2億4,000万ドルと市場予想(2億50万ドル)を大幅に上回り、CFRAが目標株価を80ドルから100ドルに引き上げたことも追い風となった。
- Akamai Technologies (AKAM): +26.58% — 第1四半期決算でEPS・売上高が予想を上回り、クラウドインフラ部門が40%成長、セキュリティ部門も11%成長した。さらに7年間総額18億ドルのAIクラウドコミットメント契約の締結を発表し、長期の安定収益への期待が一気に高まった。EverCoreとオッペンハイマーがアウトパフォームを維持し、ガートナーのAPI保護分野で「顧客の選択」に唯一選ばれたことも評価された。
- Micron Technology (MU): +15.43% — AI向けHBM需要急増とDRAM現物価格の57%上昇(4月実績)を背景にメモリ株が全面高。メタ・マイクロソフト・アマゾンの決算でAIインフラのメモリコストが主要課題と確認され、HBM製品は今後数四半期分が売約済みとされる。直近の第2四半期決算でも調整後EPSが12.20ドルと予想(9.21ドル)を33%上回り、52週高値の743.79ドルを更新した。
- Cloudflare (NET): -23.62% — 第1四半期はEPS25セント(予想23セント)・売上高6億4,000万ドル(予想6億2,200万ドル)と予想を上回ったが、AI起因として全従業員の20%超にあたる1,100人超の人員削減を発表した。第2四半期売上高ガイダンスも6億6,400万〜6億6,500万ドルと市場予想(6億6,610万ドル)をわずかに下回り、大規模リストラと慎重な見通しへの失望売りが殺到した。
- HubSpot (HUBS): -19.03% — 第1四半期売上高は前年比23.4%増の8億8,100万ドル、調整後EPSは2.73ドルと市場予想を上回ったが、第2四半期売上高ガイダンスが8億9,700万〜8億9,800万ドルと予想(9億200万ドル)を下回ったことが失望を招いた。AI関連の顧客解約懸念も浮上し、シティがBuy→ニュートラル(目標株価321ドル→230ドル)に、BofAがBuy→アンダーパフォーム(目標株価300ドル→180ドル)にそれぞれ格下げした。
為替・金利動向
ドル円は156.83円付近で推移し、4月30日につけた高値160.66円から調整局面が続いている。強い雇用統計を受けたドル買いの一方、米イラン軍事緊張による地政学リスクがドルの上値を抑えた。米10年国債利回りは4.35〜4.36%水準で推移し、雇用統計の上振れによる利下げ期待の後退が意識されたものの、大きな動意は限られた。日本の10年国債利回りは約2.49%付近で推移した。雇用統計が予想を大幅に上回ったことでFRBの早期利下げ観測はさらに後退し、インフレ動向を確認するまで市場は方向感を模索する展開となった。
今後の注目点
翌週の最大注目イベントは5月12日(火)午前8時30分(米東部時間)発表の4月消費者物価指数(CPI)。4月雇用統計が大幅上振れとなったことでインフレの粘着性が再確認されるかが焦点となり、結果次第でFRBの利下げ時期見通しが大きく変わる可能性がある。また、AIインフラ関連の決算シーズンが継続しており、各社のガイダンスが引き続き相場の方向性を左右する見込みだ。米イラン情勢など地政学リスクも継続監視が必要で、原油価格や安全資産への資金フローへの影響に注意が必要。半導体・メモリ株については、HBM需要の持続性とDRAM・NAND価格動向が株価の鍵を握る。
