米労働省が発表した5月の非農業部門雇用者数は前月比17.2万人増と、市場予想の8.5万人を大幅に上回った。この強い雇用統計を受けてFedによる利下げ開始が一段と遠のくとの見方が広がり、米国株式市場は全面安となった。S&P500は2.64%安の7,383.74、ダウ平均は1.35%安の50,866.78、NASDAQは4.18%安の25,709.43で引けた。恐怖指数VIXは前日比39.68%急騰し21.51まで上昇した。米10年国債利回りは4.5%を超え、30年国債利回りは5%台に上昇。利回り上昇と利下げ観測の後退が重なり、特にバリュエーションの高いAI・半導体関連銘柄への売りが集中した。NASDAQの4%超の急落は2025年4月以来の大幅安で、この日の下落を半導体株が主導した。
半導体株急落でNASDAQ4%安、雇用統計が利下げ懸念再燃
5月雇用統計が予想(8.5万人増)の約2倍に達する17.2万人増を記録し、Fed利下げ後退懸念からNASDAQが4.18%急落。半導体株が軒並み二桁安となり市場全体を圧迫。VIXは39.68%急騰し21.51に達した。
市場概況
セクター動向
半導体・テクノロジーセクターが最大の打撃を受けた。Broadcomが7%超、Marvell Technologyは16%超、Micron Technologyは約13%、IntelとAMDはいずれも約11%急落し、半導体株で総額1兆ドル規模の時価総額が消失した。AI関連銘柄へのモメンタム取引がここ数カ月で株価を大きく押し上げていた分、強い雇用統計を契機に手じまい売りが加速した。一方でディフェンシブセクターへの資金シフトが顕著だった。生活必需品ではコカ・コーラ・コンソリデーテッド(COKE)が+5.66%、クロロックス(CLX)が+5.03%と逆行高となった。ヘルスケアではCooper Companies(COO)が+8.58%、argenx(ARGX)が+5.82%と堅調。消費者サービスでは外食チェーンのTexas Roadhouse(TXRH)が+5.68%と全体安の中で健闘した。資源・素材セクターではHudbay Minerals(HBM)が14.81%急落し、利回り上昇とドル高を受けた商品市況の圧迫と、リスクオフムードが重なった。
注目銘柄
- Planet Labs PBC (PL): -25.98% — 最大15億ドル規模のATM(エクイティ・ディストリビューション)プログラムの設定を開示したことで大規模な株式希薄化懸念が台頭し急落。同日発表の2026年度第2四半期決算では売上高9,415万ドル(前年同期比+42%増、コンセンサス比4.8%上回り過去最高)を記録したが、利益率ガイダンスの引き下げも重なり、好決算をすべて消す下落となった。
- Marvell Technology (MRVL): -16.05% — 強い雇用統計を受けた半導体セクター全体の売りに加え、直近3カ月で株価が約318%上昇した過熱モメンタム銘柄としての急反落が本格化した。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが「次のトリリオンダラー企業」と言及した後、同社株は205ドル前後から316ドル超へ短期間で急騰していたが、その修正が一気に加速した。
- Rambus Inc. (RMBS): -14.20% — Marvell・Micron・Intelなど半導体大手が軒並み二桁安となる中、メモリチップIPライセンス企業であるRambusもセクター全体の急落に連動した。フォワードPER約70倍という割高な水準での売り崩しが進んだほか、CFO辞任の発表も投資家心理を悪化させる追い打ちとなった。
- The Cooper Companies (COO): +8.58% — 2026年度第2四半期決算が市場予想を大幅に上回り急騰。非GAAP希薄化EPSは1.21ドルで市場予想1.04ドルを16.3%上回り、売上高も前年同期比8%増の10.8億ドルと過去最高を更新した。CFOは積極的な自社株買い方針を表明し、CEOも直近で約80.8万ドル相当の1万株を買い増したことが経営陣への信頼感として好感された。
- argenx SE (ARGX): +5.82% — ロンドンで開催中のEULAR 2026学術会議(6月3〜6日)において、主力薬Vyvgart(efgartigimod alfa)の筋炎・シェーグレン症候群に対する長期臨床試験データを発表。持続的な臨床的ベネフィットと安全性プロファイルが確認されたことが好感された。全体相場の急落局面でヘルスケア株へのディフェンシブ資金シフトも追い風となった。
為替・金利動向
5月雇用統計が予想を大幅に上回ったことを受け、ドルは主要通貨に対して堅調に推移した。ドル円は160円前後で推移し、同水準での攻防が続いたことから日本当局の口先介入への警戒感が高まった。米10年国債利回りは4.5%超まで上昇し、30年国債利回りは5%台に乗せた。雇用統計では失業率が4.3%で横ばいだったが、雇用者数の大幅な上振れがFedの利下げ時期の後ずれ観測を強め、国債が売られた。賃金上昇率(前年比3.4%)はインフレの持続懸念を残す水準であり、長期金利の上昇を後押しした。ドル高・金利高という組み合わせがAI・成長株のバリュエーション低下圧力をさらに高め、この日の急落の一因となった。
今後の注目点
最大の焦点は6月11日(水)発表予定の5月消費者物価指数(CPI)。今回の強い雇用統計と合わせてFedの利下げ見通しに影響する重要指標となる。6月17〜18日のFOMC会合では最新のドット・プロットによる年内利下げ回数の見通し変化に注目が集まる。半導体・AI関連セクターについてはBroadcomなど主要企業の今後の決算で業績見通しが確認されるかが反発の鍵を握る。為替面では円が160円近辺という日本当局が口先介入を行う水準での推移が続いており、実際の介入有無が市場の注目点となる。VIXが21.51と高止まりしている中、リスク選好の回復には利下げ期待の再燃か企業業績の好調を示す材料が必要となりそうだ。
