2026年7月14日の米国株式市場は、6月消費者物価指数(CPI)が前年比3.5%上昇となり市場予想の3.8%を下回ったことを好感し、S&P500は前日比0.38%高の7543.59、ナスダック総合は0.9%高の26107.01で取引を終えた。一方でダウ平均は0.02%高の52508.27とほぼ横ばいで推移した。これはIBMが第2四半期の業績が市場予想を下回るとの事前警告を発表し株価が25.20%急落、同社にとって過去最大の下落率を記録し、ダウ平均の上昇を大きく抑えたためである。インフレ鈍化を受けて利下げ観測が強まり、半導体・サイバーセキュリティ関連株を中心に資金流入が見られた一方、IBMの警告を受けてソフトウェア・エンタープライズIT関連株には売りが波及した。VIX指数は16.5(前日比-3.85%)に低下し、市場心理は総じて落ち着いた地合いとなった。
インフレ鈍化でハイテク急伸、IBM急落
6月CPIが市場予想を下回りS&P500とナスダックは上昇したが、IBMは業績警告で25%急落し過去最大の下げ幅を記録、ダウ平均の重しとなった。半導体・サイバーセキュリティ関連株は軒並み急伸し、ロシア系サイバー攻撃への共同警告も追い風となった。
市場概況
セクター動向
半導体・AIインフラ関連セクターが大幅高となった。韓国SKハイニックスの米国預託証券(ADR)がレバレッジ型ETFの新規上場やオプション取引開始、Nvidia向け12層HBM4の量産開始を材料に急騰したほか、タワーセミコンダクターは日本政府から10億ドルの助成を受けた30億ドル規模のシリコンフォトニクス生産能力拡大計画を発表し急伸、光通信部品のアプライド・オプトエレクトロニクスもテキサス州での新工場建設を材料に買われた。サイバーセキュリティセクターも、CPI鈍化に伴う利下げ期待に加え、米CISA・NSA・FBIがロシア国家系ハッカーによる重要インフラ標的の攻撃について共同警告を発したことを受け、クラウドストライクやオクタなど関連銘柄が軒並み大幅高となった。一方、IBMの業績警告を受けてエンタープライズソフトウェア・ITサービスセクターには売りが波及し、アトラシアンやサービスナウ、ワークデイなど同業他社にも下落が広がった。通信機器セクターではエリクソンが第2四半期決算で減収と粗利率悪化見通しを示し急落するなど、セクターごとに明暗が分かれた。
注目銘柄
- SKハイニックス (SKHY): +27.29% — 米国預託証券(ADR)がレバレッジ型ETFの新規上場やオプション取引開始で商いが急増したほか、Nvidia向け「Vera Rubin」プラットフォーム向け12層HBM4の量産・出荷開始を発表しAIメモリ需要期待が高まった。
- クラウドストライク (CRWD): +12.14% — ベンチマークやUBSが目標株価を大幅引き上げ(ベンチマークは195ドルから230ドルへ)、加えて米CISA・NSA・FBIがロシア国家系ハッカーによる重要インフラ攻撃への共同警告を発表しサイバーセキュリティ需要期待が高まったことに加え、CPI鈍化による利下げ観測も追い風となった。
- アプライド・オプトエレクトロニクス (AAOI): +12.13% — テキサス州に40万平方フィート規模の光トランシーバー新工場建設を発表、ロゼンブラット証券が2026年後半の注目銘柄に選定したほか、中国子会社が上海浦東発展銀行との与信枠を倍増させたことも好感された。
- タワーセミコンダクター (TSEM): +11.24% — 日本政府から10億ドルの助成を受け、シリコンフォトニクス・シリコンゲルマニウム・先端光学パッケージング生産能力増強に30億ドルを投資すると発表。マーベルへのコヒーレント光集積回路の累計出荷が500万個を突破したことも材料視された。
- オクタ (OKTA): +10.81% — クラウドセキュリティ株全般への資金流入に加え、米CISA・NSA・FBIによるロシア国家系ハッカーの重要インフラ攻撃に関する共同警告を受けてセキュリティ需要拡大期待が高まり、52週高値を更新した。
- IBM: -25.20% — 第2四半期の暫定決算を発表し、調整後EPS2.93ドル(市場予想3.02ドル)、売上高172億ドル(市場予想178.6億ドル)といずれも予想を下回った。クリシュナCEOは、顧客企業がソフトウェア・インフラ関連支出を、需給逼迫が懸念されるメモリ等ハードウェア購入に振り向けたことが響いたと説明。1営業日の下落率としては同社の過去最大を記録した。
- エリクソン (ERIC): -13.48% — 第2四半期決算で売上高が前年比6%減の527億スウェーデンクローナ(約54.2億ドル)と市場予想を下回り、主力のネットワーク事業では第3四半期粗利率見通しを前四半期の50.4%から49%へ引き下げ。AI需要拡大に伴う部品コスト上昇が今後の業績を圧迫するとの見通しも嫌気された。
- バイオジェン (BIIB): -8.17% — アルツハイマー病治療薬候補ディラナーセンの第2相試験(CELIA試験)の詳細データで、最低用量(6カ月毎60mg投与)が最も高い有効性を示す一方、高用量では効果が劣るという想定と逆の用量反応関係が判明。RBCキャピタルが試験結果の再現性や商業化の可能性に疑問を呈したことも売りを誘った。
- アトラシアン (TEAM): -7.36% — IBMの業績警告を受け、企業がソフトウェア予算をハードウェア購入に振り向けているとの懸念からエンタープライズソフトウェア株全般に売りが波及。サービスナウやワークデイ、セールスフォースなど同業他社にも同様の下げが見られた。
為替・金利動向
米10年国債利回りは4.6%台で推移。6月CPIが市場予想を下回ったことで年内利下げ観測が強まったものの、ウォーシュ次期FRB議長候補の議会証言を控え利回りは高水準を維持した。ドルインデックスは100.91と7月上旬の高値(101.39付近)からやや軟化。ドル円は底堅いドル需要とキャリー取引を背景に円安基調が続いた。
今後の注目点
IBMは7月22日に本決算発表を予定しており、業績警告の詳細な内訳や通期ガイダンスの修正内容が焦点となる。週後半には主要銀行の決算発表が本格化するほか、ウォーシュ次期FRB議長候補の議会証言も注目される。インフレ鈍化を受けた次回FOMCでの利下げ観測の行方や、半導体・サイバーセキュリティセクターへの資金流入が続くかどうかも市場の関心を集めそうだ。
