2026年9月4日の米国株式市場はS&P500が前日比0.38%安の7718.60、NYダウが0.51%安の53414.25、ナスダック総合が0.29%安の26506.99と主要3指数が揃って下落して取引を終えた。この日発表された8月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比16.2万人増と市場予想の5.6万人増を大幅に上回り、失業率は4.1%で横ばいとなった。強い雇用データを受けて、9月15〜16日開催のFOMCでの追加利上げ観測が高まり(利上げ確率は発表前の52%程度から59%前後へ上昇)、金利上昇への警戒から株式は売られた。恐怖指数のVIXは前日比1.47%高の14.53と上昇し、投資家心理はやや慎重化した。半導体・メモリ関連銘柄が大きく買われた一方、決算・ガイダンスを受けてソフトウェア関連や小売関連の主力銘柄が軒並み急落するなど、指数の下げ幅以上に個別銘柄のばらつきが目立つ相場となった。
雇用統計上振れで米株3指数下落、半導体は逆行高
8月雇用統計が予想を大幅に上回りFRB利上げ観測が強まったことで主要3指数が揃って下落。VIXも上昇し警戒感が強まった。半導体・メモリ関連は堅調な一方、ソフトウェア株は決算・ガイダンス失望から急落する銘柄が相次いだ。
市場概況
セクター動向
半導体・AIインフラ関連は総じて堅調だった。DRAM・NAND市場の需給逼迫観測とAIデータセンター向け需要の拡大期待を背景に、メモリ大手のサンディスク(SNDK)や、AI向け高速接続半導体のアステラ・ラボ(ALAB)、AIアクセラレータのセレブラス・システムズ(CBRS)、アナログ半導体のセムテック(SMTC)、プリント基板のTTMテクノロジーズ(TTMI)が大幅高となった。対照的にエンタープライズソフトウェア株は軒並み急落し、アドビ(ADBE)は決算発表を控えたCEO交代人事を嫌気し、オートデスク(ADSK)は決算自体は市場予想を上回ったものの通期ガイダンスが市場予想に届かず売られた。保険業界向けソフトのガイドワイヤー・ソフトウェア(GWRE)も決算内容は良好だったが2027会計年度の成長鈍化を示唆するガイダンスが嫌気された。消費関連ではアパレル大手ルルレモン(LULU)が通期ガイダンスの大幅下方修正を受け急落し、金融データ・分析セクターでは信用スコア大手フェア・アイザック(FICO)が規制環境の変化を受けて売られるなど、決算・ガイダンス関連の材料が個別株の明暗を分けた一日となった。
注目銘柄
【値上がり】
- サンディスク (SNDK): +11.90% — NAND・DRAM市場の需給逼迫観測と旺盛なAIデータセンター向けストレージ需要への期待から、記憶メモリ株全般に買いが波及して上昇。
- セレブラス・システムズ (CBRS): +10.30% — 新型AIシステム「CS-4」の一般提供開始や海外データセンター向け商談の進展、直近四半期決算でのクラウド事業の大幅成長(前年比287%増)を材料に上場後ロックアップ解除に伴う前日の下落分を取り戻した。
- アステラ・ラボ (ALAB): +9.75% — ジェフリーズが目標株価を270ドルから450ドルへ大幅に引き上げ「買い」を継続、AI向け高速接続需要の拡大とQ2売上高が前年比104%増となった実績を評価する動きが継続。
- セムテック (SMTC): +9.22% — 8月下旬に発表した第2四半期決算で売上高が前年比32.7%増と市場予想を上回り、市場予想を大きく上回る第3四半期ガイダンス(EPS 1.02〜1.08ドル)を示したことを受けたアナリストの目標株価引き上げが継続的に買いを支えた。
- TTMテクノロジーズ (TTMI): +8.85% — データセンター・ネットワーキング向け売上が前年比91%増と急伸した8月の好決算とEpiq買収によるRF・DSP技術強化への期待、AIデータセンター投資拡大の恩恵を受ける銘柄として半導体セクターの上昇に連動。
【値下がり】
- ガイドワイヤー・ソフトウェア (GWRE): -19.93% — 前日発表の第4四半期決算は売上高が前年比15%増、EPSも市場予想を上回ったが、2027会計年度のガイダンスが成長鈍化を示唆し、高いバリュエーション(非GAAPベース予想PER41.5倍)への警戒から時間外を含め大幅安となった。
- ルルレモン アスレティカ (LULU): -17.38% — 第2四半期決算で売上高が前年比4%減、既存店売上高も9%減と苦戦。通期売上高ガイダンスを110億〜111.5億ドルから103.5億〜105億ドルへ、EPSガイダンスも大幅に下方修正し、北米需要の弱さや新製品への反応不足を経営陣が認めたことで急落した。
- フェア・アイザック (FICO): -16.68% — 米連邦住宅金融局(FHFA)が住宅ローン審査でファニーメイ・フレディマックに競合のヴァンテージスコアの採用を容認する方針を発表し、住宅ローン向け信用スコア市場での事実上の独占的地位が脅かされるとの見方から急落した。
- オートデスク (ADSK): -8.26% — 8月27日発表の第2四半期決算自体は市場予想を上回ったが、通期調整後EPSガイダンスの中央値がアナリスト予想を下回り、決算内容の良さよりガイダンスの弱さを嫌気する売りが続いた。
- アドビ (ADBE): -6.73% — 9月10日の決算発表を控える中、取締役会が社内昇格のアニル・チャクラバーシー氏を新CEOに指名したと伝わり、AI(Firefly等)戦略の継続性への懸念から株価が急落した。
為替・金利動向
強い雇用統計を受けてドルは総じて底堅く推移し、ICEドルインデックスは前日比0.3%高の99.23前後まで上昇した。米10年国債利回りは1.8bp上昇し4.782%で終了、2年債利回りも5.3bp上昇の4.39%となるなど、利上げ観測の高まりを織り込む形で金利は上昇した。ドル円は雇用統計発表後に155円台前半から一時156円台まで上昇したが、日銀の追加利上げ観測を背景とした円の底堅さや当局によるものとみられる円買い介入の思惑もあり上値は限定的となり、一日を通じて不安定な値動きとなった。
今後の注目点
米国市場は9月7日(月)がレーバーデーの祝日で休場となる。週明け以降は9月15〜16日開催のFOMCを控え、9月11日発表予定の8月消費者物価指数(CPI)、およびそれに先立つ生産者物価指数(PPI)が金融政策見通しを左右する重要指標となる。FOMCでは政策金利発表に加え、経済見通し(SEP)の改定も予定されており、9月5日からは会合前の「ブラックアウト期間」に入るため当局者発言による材料は乏しくなる見込み。決算面ではアドビが9月10日に第3四半期決算を発表予定で、AI関連(Firefly等)の収益化動向やCEO交代後の経営方針に関するコメントが注目される。また、半導体・メモリ関連の上昇基調が続くか、ソフトウェア・消費関連株の決算失望売りが一巡するかも、来週以降の相場の方向性を占う上で焦点となる。
